受託開発者のデザインメモ

現在学んでいる UX デザイン・サービスデザインについての振り返りや、自主的な調査活動について書いています。

自主調査 - アーティスト・イベント - 高円寺阿波踊り 2017

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調査概要

前回の自主調査では初めてエスノグラフィを用いて調査を行いました
初めての試みで上手くはいきませんでしたが、とにかく場数をこなすのが目標のため、今後も継続させて行きたいと思います。
 
そして今回も調査を行いましたが、調査対象に選んだのは高円寺の阿波踊りです。
  
毎年 8 月の最終土・日の 2 日間で行われ、
 参加連:のべ 169 連
 観客動員数:88 万人(2016 年実績)
と、多くの人が集まるイベントです。
駅周辺の道路・通り・商店街などを使い、8 箇所の演舞場でそれぞれ色々な連が練り歩きます。
 
今回の調査目的も、前回同様以下のようにしました。

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目的:「新しい種類のイベントを検討するため、ユーザニーズを調査する」
- ファンが何に興味を持ち、支持するようになるか
- どのようなイベントに参加したいと思うか
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調査日は 2 日目にあたる 08/27 (日) です。
 

現地調査実施

今回は、前回使った「KA 法」ではなく、PARC (PARC, a Xerox company) の提供するワークショップ「エスノグラフィを利用したイノベーション・ワークショップ (IWS)」
で教わった方法・プロセスに従って行います。
 
初めに現地で行う調査については前回とそれほど大きく違いは無く、気になった事象を記録するというものです。今回は現場の性質上、比較的写真が撮りやすいので、カメラでの撮影によって記録を行いました。
  

デブリーフィング

現地調査終了後、撮影した写真を元に、観察内容(=エピソード)を書き出します。
この時点では、とにかく見た出来事についてただ書き出すだけです。
 
(付箋が汚いので…)それぞれ簡単に説明します。
 

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会場の通路脇には座り立ち見の人達が約 3 列ずつ居ました。座りの人たちは、ござやシート、簡易椅子などを持って来て、花見のようなスタイルで見物していました。

 

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テーブル替わりだったのか、瓶ビール(?)のケースを肘置きに使っている人もいます。

 

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会場近くの住宅やお店のベランダなどから見物する人もちらほらいました。

(ただし、そこまで多いという感じではないです)

 

 

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沿道のシート上では、子供たちが踊りに飽きているのか、UNO がテーブル上に広げられていました(なぜかハンドスピナーも…)

  

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商店街にある演舞場では、人だかりが多く人の密度も高いため、子供連れのお父さんが肩車をしたり抱え上げたりして見えるようにしています。

 

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演舞場では連が一方通行で進んで行きますが、終わりの方に来ると楽器の音が一層大きくなり、周りの見物客も団扇で扇ぎながら一緒になって盛り上がっていました。
(ライブのペンライトを想像したのは私だけでしょうか。。。)
 

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ある演舞場の終端地点では、多くの人がスマフォで踊りの様子を撮影していました。カメラで撮影する人もいますが、圧倒的にスマフォが多い感じです。

 

 

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花火大会などでは浴衣の人が多いイメージですが、今回の会場に来ている人は浴衣の人が少ない印象でした。普通の夏の恰好ですね。
 

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写真は会場に向かう途中の一方通行の場所ですが、交通規制で車が通らないためか、親子が道路の真ん中で広々と遊んでいます。
 

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高円寺では元々そういう風習なのかもしれないですが、地面に座り込んでいる人が多かったです。子供たちだけかと思いきや、大人も一緒に座り込んでいます。

 

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沿道脇の一つのシートでは、椅子をテーブル替わりにしていました。モザイク上から分からないですが、青い椅子に牛丼が乗っています。

 

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演舞場に面した居酒屋さんは始まる前から混んでおり、踊りが見えない席にも関わらず満席でした。踊りを見るために軽く食べる、という感じではなく、しっかり食べながら楽しんでいるようです。
 

ストーリーの検討

デブリーフィングが終わったら、エピソード(=観察内容)から「ストーリー」を紡ぎます。ストーリーとは「エピソードの集まりで、観察対象を表す特徴的な事象」です。
 
ちなみに上記で述べたエピソードのまとまりは、ストーリー単位にまとまっています。
 

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これは子供に関するストーリーです。
「会場やその付近では、子供に阿波踊りを楽しませようと肩車や抱え上げている様子が見られた。一方、子供達で集まると踊りを見ずに他の遊びをしているケースもあり、家族全員で阿波踊りを楽しむことが十分にできていない」
 
 

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こちらはエピソードが一枚だけから作ったエピソードなので、少々浅いです。
「会場の出口付近は一番盛り上がる場所で、応援する人も撮影する人も集まりやすい」
 
 

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こちらは阿波踊りに直接関係の無い部分についてです。

「演舞場近くの飲食店では、踊りが見えない席にも人が入っている。また、会場でも多くの人が食べ物を抱えて見物している。踊りそのものではなく、雰囲気を楽しむ人が多いと思われる」

 

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こちらは観覧についてです。

「高円寺は住宅も多く、会場付近には建物から見られる場所も多いが、実際にその位置から見ている人は多くなく、出来るだけ会場近くに行って見たい人が多いと思われる」

 

エリアの検討

次はストーリーを元に「エリア」を決めます。エリアとは「ステークホルダーが取り組むべき課題や機会を客観的に記述したもの」です。明らかに問題であるものや、メッセージ性のあるものなどが考えられます。

 

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 「住宅も多く、家族で見に来ることが多いイベントだが、子供が十分に楽しめるとは言い難い。子どもが積極的に参加できるようにデザインすることが望ましい。」

より家族向けに焦点を当てたエリアです。どのイベントでも家族連れは子供が楽しめるかが重視されるので、現実的なテーマかと思われます。(逆に言うと捻りはないですが…)

 

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「多くの人が集まる一方、最前の方で踊りを見ている人以外は、通常の一般的な祭りとあまり変わらない見物の仕方になっている。阿波踊りらしい関わりを検討し、差別化したい」

そこまで問題になるのかは不明であり、少々こじつけ感はありますが、阿波踊りらしい部分を見物者が得られると、より良くなると考えました。常連の方へのインタビューなどができると、より深掘りして確認できたかなと思います。

 

考察 

本来のワークでは、複数出てきたエリアの中から、特に注目するべきエリア(=フォーカスエリア)を選び出します。

そして、そのフォーカスエリアについてアイディエーションを行い、解決方法やイノベーションイデアを考えて行きます。

 

今回のワークではそこまではやりませんでしたが、個人的には「子供連れの阿波踊り参加」について興味があります。スケジュールや交通整理などの課題はありそうですが、連と連の間や一定間隔ごとに子供が演舞場を通るなどすれば、家族でのイベントへの参加具合が上がるかなと思います。

 

まとめ

今回は前回とは違って、写真を使って記録しました。手軽に記録はできますが、現場で撮影していると惰性で撮影することもあり、前回に比べて「何が問いか?」が曖昧になる感じがしました。
 
また途中にも書きましたが、観察だけでなく対象者に直接インタビューしたい気持ちにしばしばかられました。特に明確な問いがあるわけではないですが、ベテランにインタビューすることで見える視点もあるのかなと思いました。